2016年10月26日
ここの温泉旅館は21時以降、混浴
北海道と関東圏では気温が違い、旅のフェイスオフとなった神奈川県では
30代らしい皮下脂肪をまとった僕らは余計に汗ばむ気候だった。
スノーホッケーを学びそして感じてきたが、2泊3日の2日目終盤ともなると使い切ってしまった体力が限界だった。
それに宿までも少し遠かったというのもあるかもしれない。
車中での会話も途切れ途切れとなり、後部座席に乗るメンバーの声も聞こえなくなった。
すっかり日も沈んでおり、山道を走っていたので街灯もそれほどなく
対向車のヘッドライトが時折、僕らの車内を照らす程度。
そんな車内は僕らの雰囲気をそのまま映し出しているように殆どの時間が暗闇に包まれていたので、後部座席のメンバーが寝たかどうかをわざわざ明かりをつけてまで確認することもしなかった。
口には出さないけど、それぞれが今日は「楽しかった」と振り返っているはずだ。
試合中、監督はよく「声を出せ」というけど体力も使い切った後半は息も上がり声を出す体力もない。
今は息が上がっていないけど旅の疲れと眠気が自然と会話を少なくしているような気がする。
それが別に気まずいとか変な空気で辛いとか、そういうわけじゃないからこれはこれでいいんだと思う。
よっぽど試合中の後半の方が辛い。
延々と山道を走っていると、少し町というか開けた感じがしてきた。
建物もいくつか見えてきたので目的地が近いのかもしれない。
そして久しぶりの信号で車は停車する。
対向車線で同じく信号待ちをしている車のヘッドライトが眩しくこちらを照らしている。
何気なくバックミラーを覗くと
後ろのメンバーは寝ていた。
信号から程なくして目的地である旅の最後の宿、塩原地区にある温泉宿に到着した。
到着した瞬間、これで温泉に入って寝れるという安堵感が沸いてきて幾分体力が回復した様子。
そこはなんとも「THE旅館」感が出ており、ビジネスホテルに宿泊するのとはまた違った感じ。
いい意味で古いニオイと古い受付。
目に映る全てのモノがいい意味で古い。
いや、味がある。
受付をしてくれた旅館の人がとても親切で
何十年、いつ何時もお客様を笑顔で出迎えてきたことを証明するかのように深くきざまれた目じりのシワが印象的だった。
その親切な旅館の人が「お部屋まで案内致します。」と満面の笑顔でいうので受付時、床に置いていたカバンを担ぎ直しついていった。
4人乗れば満員だと思われる味のある狭いエレベーターに案内された。
カバンも持っているせいもあって4人肩を寄せ合いエレベーターに乗った。
メンバーとこんなに肩を寄せ合う程の距離感になったのは、2月のスノーホッケー大会で相手のシュートコースを塞ぐ為に壁を作った以来かなと思ったが、その時の緊張感やドキドキもなく、ただ単に今は肩を寄せ合っているだけ。
そんな時、ふとエレベーターに貼られた案内の張り紙に目を疑った。
目をこすり、頬を叩いて夢ではないことを確認した後、張り紙をもう一度みたが間違いなかった。
「当旅館は21時以降混浴となります」
ドクンと大きく脈打ったあと、ゴクリと唾を飲み込む音が静かなエレベーターの中に響いた。
つづく
30代らしい皮下脂肪をまとった僕らは余計に汗ばむ気候だった。
スノーホッケーを学びそして感じてきたが、2泊3日の2日目終盤ともなると使い切ってしまった体力が限界だった。
それに宿までも少し遠かったというのもあるかもしれない。
車中での会話も途切れ途切れとなり、後部座席に乗るメンバーの声も聞こえなくなった。
すっかり日も沈んでおり、山道を走っていたので街灯もそれほどなく
対向車のヘッドライトが時折、僕らの車内を照らす程度。
そんな車内は僕らの雰囲気をそのまま映し出しているように殆どの時間が暗闇に包まれていたので、後部座席のメンバーが寝たかどうかをわざわざ明かりをつけてまで確認することもしなかった。
口には出さないけど、それぞれが今日は「楽しかった」と振り返っているはずだ。
試合中、監督はよく「声を出せ」というけど体力も使い切った後半は息も上がり声を出す体力もない。
今は息が上がっていないけど旅の疲れと眠気が自然と会話を少なくしているような気がする。
それが別に気まずいとか変な空気で辛いとか、そういうわけじゃないからこれはこれでいいんだと思う。
よっぽど試合中の後半の方が辛い。
延々と山道を走っていると、少し町というか開けた感じがしてきた。
建物もいくつか見えてきたので目的地が近いのかもしれない。
そして久しぶりの信号で車は停車する。
対向車線で同じく信号待ちをしている車のヘッドライトが眩しくこちらを照らしている。
何気なくバックミラーを覗くと
後ろのメンバーは寝ていた。
信号から程なくして目的地である旅の最後の宿、塩原地区にある温泉宿に到着した。
到着した瞬間、これで温泉に入って寝れるという安堵感が沸いてきて幾分体力が回復した様子。
そこはなんとも「THE旅館」感が出ており、ビジネスホテルに宿泊するのとはまた違った感じ。
いい意味で古いニオイと古い受付。
目に映る全てのモノがいい意味で古い。
いや、味がある。
受付をしてくれた旅館の人がとても親切で
何十年、いつ何時もお客様を笑顔で出迎えてきたことを証明するかのように深くきざまれた目じりのシワが印象的だった。
その親切な旅館の人が「お部屋まで案内致します。」と満面の笑顔でいうので受付時、床に置いていたカバンを担ぎ直しついていった。
4人乗れば満員だと思われる味のある狭いエレベーターに案内された。
カバンも持っているせいもあって4人肩を寄せ合いエレベーターに乗った。
メンバーとこんなに肩を寄せ合う程の距離感になったのは、2月のスノーホッケー大会で相手のシュートコースを塞ぐ為に壁を作った以来かなと思ったが、その時の緊張感やドキドキもなく、ただ単に今は肩を寄せ合っているだけ。
そんな時、ふとエレベーターに貼られた案内の張り紙に目を疑った。
目をこすり、頬を叩いて夢ではないことを確認した後、張り紙をもう一度みたが間違いなかった。
「当旅館は21時以降混浴となります」
ドクンと大きく脈打ったあと、ゴクリと唾を飲み込む音が静かなエレベーターの中に響いた。
つづく